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公務員の生物の遺伝は、用語が難しく感じる方や、遺伝の構造が理解できていないため、苦しい暗記作業に悩まされている人も多くいます。
私自身も勉強を始めた時に、その構造がさっぱりわかりませんでした。
しかし、その構造が理解できると暗記の負担も軽減されるので得点源として安心して解ける問題に変化します。
また、公務員試験なので、生物の本質をとらえるよりも、どこを覚えると問題が解けるのか?
そちらに注目して、解き方、覚え方を記しています。
今回のゴールは、2点です。
1.遺伝の構造を大まかに把握する。
2.公務員試験に対応した、遺伝の覚えるべきポイントを把握する。
これを問題を解きながら把握していきましょう。
一遺伝子雑種の事例
例題 エンドウの豆の色が黄色と緑の純系の親を交雑すると、雑種第1代(F1)は全て黄色になった。この時に、自家受精して得られた雑種第2代(F2)黄色の豆と緑の豆の割合はいくらになるか。
答え
黄:緑=3:1
この問題を解くために、必要な遺伝の構造や知識を学んでいく。
遺伝の構造
遺伝の構造は下記のように、三世代構造になっています。
P(親)
↓
F1(子世代)-雑種第1代
↓
F2(孫世代)-雑種第2代
公務員試験の問題内でも、F1や雑種第1代などの用語がでてきますので、この三層構造とどこがF1でどこがF2なのか覚えておいてください。
遺伝の問題は、親世代の遺伝情報を引き継ぎながら、3世代目でどのように引き継がれているかが問われています。
その変化の引き継がれ方によって、種類分けされています。
一度に全部の種類を覚えるのは大変ですが、そういうルールだと考えれば、一つづつ整理して覚えやすくなります。
遺伝するものとは?
遺伝するものとは、生物がもつ、性質です。
遺伝の問題では、対立形質(たいりつけいしつ)と呼ばれる、
例1 目の一重、二重
例2 髪の色(人:金髪、黒髪、ねずみ:黒、灰色、等)
例3 花の色(白、ピンク、黄色など)
例4 目の色(黒、茶、青、等)
どちらか一方の性質しか、見られない性質のことを言います。
例えば、一重の目と二重の目が一つの目にあることはありません。
この対立形質が三世代引き継がれ方を調べます。
この対立形質が一つのものを、一遺伝子雑種、2つのものを、2遺伝子雑種と呼びます。
遺伝子情報を表す時に、AAとaaのように表します。
これは、英文字の頭文字には特に意味はありません。
大文字と小文字で対立していることを表現しています。
AAのA(色が黄色)、aaのa(色が緑)です。
これがRRとrrでも、R(色が黄色)、r(色が緑)となり、同じことを意味しています。
この例題の一遺伝子雑種の場合の遺伝子の情報は3種類に決まっています。
AA、Aa,aaの3種類になります。
この時、AA,aaの結合状態をホモ結合、純系と呼びます。
Aaはヘテロ結合と呼びます。
同じ遺伝子情報のものを交雑(かけあわせる)ことを自家受精といいます。
この問題の遺伝子情報の流れは、
P:黄色(AA)と緑(aa)の純系の親を交雑する。
F1:全て黄色になった。
F2:F1世代を自家受精して、得られたF2世代。
P(親世代)AA(黄色)×aa(緑)
↓
F1 Aa,Aa,Aa,Aa(AA×aa) ※全て黄色(優性の法則)
↓
F2 AA,Aa,Aa,aa(Aa×Aa) ※???
AA:Aa:aa=1:2:1 となります。
重要なことは、1:2:1に分かれるということです。
分離の法則
遺伝子情報が分かれて伝わること(AaがAとaに分かれて)を分離の法則といいます。
公務員試験では、相同染色対がそれぞれ分かれて別々の配偶子に入ることと難しい表現で問われますのでご注意を。
優性の法則
問題では、F1が全て黄色になりました。
このように、対立形質が、次の世代に引き継がれる遺伝の法則に優性の法則があります。
これは、次の世代で表に出てくる対立性質を優性、出てこない対立性質を劣性といいます。
優秀な性質だから優性と呼ばれているわけではありません。
このため、
優性を顕性(けんせい)、顕在化している(表にでている)
劣性を潜性(せんせい)、潜在化している(中にもぐっている)
と呼ぶ動きもあるようです。(逆にわかりにくいかもしれません)
問題にもどりますと、F1が全てが黄色になった。
F1の遺伝の情報は、Aa,Aa,Aa,Aaなので、A(黄色)が優性、a(緑)が劣性ということになります。
F2の遺伝情報は、AA,Aa,Aa,aaであるので、AA(黄色)、Aa(黄色)、aa(緑)となります。
そして、AA:Aa:aa = 1:2:1ですが、AA,Aa(黄色)、aa(緑)なので、黄色と緑の割合は3:1になります。
公務員試験では、この対立形質の割合を問われる事が多いので、遺伝情報の割合を覚えておきましょう。
独立の法則
2種類の対立形質の遺伝(二遺伝子雑種)の時に、二種類の遺伝子がそれぞれ影響を受けず、決まった割合で遺伝子情報が伝達される事です。
影響を受けないので、独立して遺伝が伝わるので、独立の法則と呼ばれています。
補足すると、連鎖している遺伝子構造の場合は、独立の法則は成り立たない。
二遺伝子雑種の時の遺伝子情報の伝達を以下に記しておく。
P:黄色(AA)と緑(aa)の純系の親を交雑する。
F1:全て黄色になった。
F2:F1世代を自家受精して、得られたF2世代。
P(親世代)AA(黄色)×aa(緑)× BB(まる形)×bb(しわ形)
↓
F1 AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb,AaBb(16個)
↓
F2 AB型 AABB,AABb,AaBB,AaBb,AABb,AaBb,AaBB,AaBb,AaBb
Ab型 AAbb,Aabb,AAbb
aB型 aABb,aaBB,aaBb
ab型 aabb
対立形質の別れ方は、AB:Ab:aB:ab=9:3:3:1になる事を覚えておくと暗記しやすくなる。
AB型(黄、丸)9
Ab型(黄、しわ)3
aB型(緑、丸)3
ab型(緑,しわ)1
ここで、黄色は12個、緑が4個(3:1)、丸が12個、しわが4個(3:1)となっています。
これは、一遺伝雑種の遺伝情報の伝達と同じ割合です。
これが独立の法則の、対立形質がお互いに独立して、遺伝情報が伝達されていることの証明です。
ここまでが、基本的な遺伝の構造部分です。
次は、実際の公務員試験の遺伝の問題を解きながら、遺伝の法則や種類を覚えていきましょう。
国家一般職・平成28年度
実際に出題された問題を時ながら、暗記すべきポイントや押さえたい部分を紹介していきます。
遺伝の法則に関する記述として、最も妥当なのはどれか。
1 メンデルの遺伝の法則には、優性の法則、分離の法則、独立の法則があり、そのうち独立の法則とは、減数分裂によって配偶子が形成される場合に、相同染色体がそれぞれに分かれて別々の配偶子に入ることをいう。
解説
1✖です。これは分離の法則の説明です。
正しく、文章を直すと以下になります。
1 メンデルの遺伝の法則には、優性の法則、分離の法則、独立の法則があり、そのうち分離の法則独立の法則とは、減数分裂によって配偶子が形成される場合に、相同染色体がそれぞれに分かれて別々の配偶子に入ることをいう。
公務員試験では、異なる用語を説明しているパターンの問題です。
2 遺伝子型不明の丸形(優性形質)の個体(AAまたはAa)に劣性形質のしわ形の個体(aa)を検定交雑した結果、まる形としわ形が1:1の比で現れた場合、遺伝子型不明の個体の遺伝子型はAaと判断することができる。
解説
2〇
検定交雑
遺伝子型不明の遺伝子の情報を調べる方法が検定交雑である。
対立形質が丸型(AA)としわ形(aa)とする。
丸形の遺伝子はAA,Aaである。
遺伝子型不明の遺伝子とは丸形のみである。※しわ形はaaだけなので特定される。
検定として、aaを掛け合わせると以下の結果となる。
AA×aa:Aa,Aa,Aa,Aa
Aa×aa:Aa,Aa,aa,aa
よって、全てが丸形の時は、AAと特定され、丸形としわ形が1:1のときは、Aaと特定される。
3 純系である赤花と白花のマルバアサガオを交配すると、雑種第1代(F1)の花の色は、赤:桃色:白色が1:2:1の比に分離する。このように、優劣の見られない個体が出現する場合があり、これは分離の法則の例外である。
解説
マルバアサガオの不完全優性の説明です。
補足しておくと、不完全優性も分離の法則に従っています。
また、後述説明しますが、マルバアサガオが1:2:1に分離するのは、雑種第2世代(F2)です。
3✖
文章を直すと以下の通りになる。
純系である赤花と白花のマルバアサガオを交配すると、雑種第2代(F2)雑種第1代(F1)の花の色は、赤:桃色:白色が1:2:1の比に分離する。このように、優劣の見られない個体が出現する場合があり、これは不完全優性分離の法則の例外である。
不完全優性
マルバアサガオは一遺伝子構造あので、以下の通りになります。
P(親世代)AA(白)×aa(赤)
↓
F1 Aa(桃色),Aa(桃色),Aa(桃色),Aa(桃色)(AA×aa)
↓
F2 AA(赤),Aa(桃色),Aa(桃色),aa(白色) (Aa×Aa)
雑種第1世代で全て桃色。
雑種第2世代では、赤:桃:白=1:2:1 となります。
このように、赤、白のどちらかの色が雑種第一代で発現しない場合を、不完全優性と呼んでいます。
4 ヒトのABO式血液型について、考えられ得る子の表現型(血液型)が最も多くなるのは、両親の遺伝子型がAO・ABの場合またはBO・ABの場合である。また、このように、1つの形質に3つ以上の遺伝子が関係する場合、それらを複対立遺伝子という。
解説
4✖
子の表現型(血液型)が最も多くなるのは、両親の遺伝子型がAO×BOの場合である。
文章を直すと、
4 ヒトのABO式血液型について、考えられ得る子の表現型(血液型)が最も多くなるのは、両親の遺伝子型がAO×BOAO・ABの場合またはBO・ABの場合である。また、このように、1つの形質に3つ以上の遺伝子が関係する場合、それらを複対立遺伝子という。
複対立遺伝子(ヒトABO式血液型)
人の血液型のように、対立形質の対立するものが2種類ではなく、3種類以上あるものを複対立遺伝子という。
この場合は、表現型は、A型、B型、AB型、O型の4つであるが、遺伝子の種類は、A、B、Oの3種類である。
表現型:遺伝子型
A型:AA、AO
B型:BB、BO
AB型:AB
O型:OO
優性の法則で考えると、AとBは優性、Oが劣性である。
問題にある子の表現型のパターンは以下の通りです。
AA×BB:AB,AB,AB,AB(1種類)
AA×BO:AB,AB,AO,AO(2種類)
AO×BB:AB,AB,BO,BO(2種類)
AO×BO:AB,BO,AO,OO(4種類)
5 2組の対立遺伝A,a,B,bについて、Aは単独にその形質を発現するが、BはAが存在しないと形質を発現しない場合、Bのような遺伝子を補足遺伝子といい、例としてカイコガの繭の色を決める遺伝子などが挙げられる。
解説
5✖
条件遺伝子の説明であり、例はカイウサギやハツカネズミである。
文章を直すと、
5 2組の対立遺伝A,a,B,bについて、Aは単独にその形質を発現するが、BはAが存在しないと形質を発現しない場合、Bのような遺伝子を条件遺伝子補足遺伝子といい、例としてカイウサギやハツカネズミの色を決めるカイコガの繭の色を決める遺伝子などが挙げられる。
2組の対立遺伝子の問題は、条件遺伝子、抑制遺伝子、補足遺伝子、同義遺伝子の4つのパターンを覚えることが重要である。
問題を解く上では、例となる花、動物、虫、遺伝子名、色の割合、などである。
色の割合の覚えるポイントとして、雑種第1代が遺伝子型AaBb×AaBbとなった場合は、雑種第2代は、AB:Ab:aB:ab=9:3:3:1になる事を覚えておくと暗記しやすくなる。
以下に、パターンを記す。
補足遺伝子
例:スイートピーの花の色
説明:互いに独立した二対の対立遺伝子の優性どうしがそろわないと形質を発現しない。
Aa×Bb AとBが優性だとすると、AB型の時に発現するので、それ以外は発現しない。
色の割合は、
AB型 9
Ab,aB,ab:3+3+1=7
となり、9:7になる。
条件遺伝子
例 はつかねずみ、かいうさぎ
説明:互いに独立した二対の対立遺伝子がの一方の優性遺伝子(A)は単独で発現するが、他方の優性遺伝子(B)は単独では発現できない。
とても分かり難いので色の割合で説明する。
AB型 灰色 ※ABが揃うと発現
Ab型 黒色 ※Aは単独で発現する。
aB型、ab型 白色 ※Aが含まれていないと白色が発現する
割合は、灰色:黒色;白色=9:3:4(3+1)になる。
抑制遺伝子
例 カイコガの繭の色
説明:互いに独立し二対の対立遺伝子の一方の優性遺伝子(A)が、他方の優性遺伝子(B)を抑制する。
Aが含まれるとBの遺伝子は発現しない。
AB型 白色
Ab型 白色
aB型 黄色
ab型 白色
割合は、白色:黄色=13(9+3+1):3になる。
同義遺伝子
例 ナズナの果実
説明:互いに独立した二対の対立遺伝子が同じ形質を発現する。
ab型以外は同じ要素が発現する。
AB型 ウチワ型
Ab型 ウチワ型
aB型 ウチワ型
ab型 ヤリ型
割合は、ウチワ型:ヤリ型=15(9+3+3):1となる。
その他の遺伝子
致死遺伝子
例 ハツカネズミ
説明:優性遺伝子がホモ結合した場合に、個体が出生前に死ぬ作用を発現する遺伝子を致死遺伝子という。
優性Aは黄色、劣性aは黒色とする。
AA型:出生前に死ぬ
Aa型:黄色
ab型:黒
割合は、黄色:黒=2:1となる。
伴性遺伝子
例 ヒト、キイロショウジョウバエ
説明 性染色体上にある遺伝子のことを伴性遺伝子といい、雄雌によって形質が異なる。
以上
まとめ
・遺伝の構造を理解する。
一遺伝型 AA,Aa:aa =3(2+1):1
二遺伝子型 AB:Ab:aB:ab = 9:3:3:1
・公務員試験の問われる部分を理解して、暗記を楽にする。
問題の中に記述される重要な用語が間違っているので、そこを見つけるように解くです。
日頃から市役所関係の方にはお世話になっていますので、公務員を目指す方の助力になればと思います。
2020年の試験にむけて頑張ってください!!
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